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土木資材の雑記

土木工事用不織布について

土木工事用不織布の歴史

最近は新型コロナウイルスの影響もあり、不織布マスクがとても活躍していますが、土木工事に使われているのをご存知でしょうか?
不織布の無かった昔の土木工事は、植物を土の中に入れて強度を上げたり、木の枝を組んで河川の侵食を防ぐ材料とし使われていました。
その後、石油材料の出現によって、信頼性が高く、汎用的に使用できる不織布が誕生しました。

不織布には透水性、フィルター性に優れた特性があり、今では土木工事をする上でとても重要な資材となっています。
一方で、各メーカにより素材や厚み繊維の種類が多くて分かりにくいため、用途別に分けて解説していきたいと思います。

土木工事用不織布とは

土木用不織布の主な用途として、分離・緩衝・保護・排水・補強を目的に使用されます。
河川や港湾護岸の吸出し防止工、洗掘防止工、盛土の層厚管理、ドレーン層材、透水シート、各種セパレーター等、必要とされる機能や目的によってたくさんの種類があります。

複合的な性能を有したものや、ポリエステル合成繊維で覆った遮光性がある特殊なシート、ヤシ繊維を使い環境に配慮したシートなど、メーカによって特性の違う製品が多く開発されています。
コストメリットが高く強度のある長繊維不織布が主流ですが、単繊維不織布にしかできない特性もあり使用目的によって使い分けがされています。

素材について

特殊な用途を除き、代表的な素材は概ね4種類です。

  • ポリエステル系短繊維不織布

    耐熱性・透水性に優れ腐食しないなどの特徴があります。長繊維と比べると強度は劣るが、厚みを必要とする用途に使用される。

  • ポリエステル系長繊維不織布

    単一素材の繊維がつながっているので、厚みが薄く短繊維より強度がありコストメリットが高い。厚みがある製品は短繊維に優位性があり、複合品の不織布はできない。

  • ヤシ繊維短繊維不織布

    繊維が太く丈夫で、供給量が多いことから、ココヤシの繊維が主に使用されています。ヤシ繊維をニードルパンチで樹脂でシート化し、比較的安価で環境にやさしい素材。

  • 合成繊維短繊維不織布

    ポリプロピレン、ポリエステルや裁断くずをリサイクルしたポリエステル綿などの短繊維を合成し複合的な性能を有した不織布。

長繊維(スパンボンド)不織布とは

溶融し繋がった長い糸をシート状に結合させる製法を長繊維(スパンボンド)と言います。短繊維より強度がありコストメリットが高いなどの特徴があります。

短繊維(ニードルパンチ)不織布とは

短いくて細い繊維を乗せて多数の針(ニードル)で刺して(パンチ)繊維をからませて作る製法を短繊維(ニードルパンチ)と言います。多素材の単繊維と合成したり、厚みや重量など細かく調整された製品化が可能です。

主な用途

不織布シートの主な用途は、種類が豊富で優れた透水機能をもち土砂を通しません。
また、厚みのあるものはクッション性もあります。
分離・緩衝・保護・排水・補強とさまざまな用途で使用されています。

吸出し防止

主に護岸の背面の土砂の流出を防止するために設置されるものであり、主に不織布等を材料としています。
河川護岸の場合は、流水作用により護岸裏の土砂が吸出しを受けると、空洞が発生し崩落してしまいます。
厚さ10mm以上、開孔径0.2mm以下、引っ張り強度9.8kN/㎡以上と規格値が定められています。

防波護岸の場合は、防砂布(防砂シート)と呼ばれ裏込石上に敷設され土砂の侵入を防ぐために用いられます。
厚さ4.2mm以上、引っ張り強度880N/5cm以上、伸び60パーセント以上質量500g/㎡という最低規格が定められています。

一部を除き、吸出し防止シートを使用した工法の殆どは明確な基準がありません。
使用目的により過去の実績や経験値で使用されています。

<吸出し防止用の不織布関連商品>

洗掘防止

洗掘(せんくつ)とは、水の流れや波の影響により河岸・河床(海岸・海底)の土砂が洗い流されることを意味します。
基礎や構造物周辺に空洞が発生するのを防ぎ、沈下や陥没、倒壊などの被害を防止します。

<洗掘防止例>

捨石:適当な大きさの石を水中に沈める。
沈床(ちんしょう):玉石や、石を砕いた割栗石を詰めた格子枠を、河床に沈める。
洗掘防止工:帆布やコンクリートブロック、ゴムやアスファルトのマットなどを積み上げる。

シートによる洗掘防止は、主に港湾構造物の下部に使用されます。

<洗掘防止用の不織布関連商品>

遮水シート保護

遮水シートを施工する時に鋭利な突起物で損傷を受ける可能性があります。
遮水シートに、土圧あるいは水圧が作用すると、シートに応力が集中し刃物で物を切るときのように破れが生じ水漏れが生じます。
遮水シートとの間に保護マットが存在すると、繊維が突起角を包み込み遮水シートの破損を防ぐことができます。

路床路盤の分離(セパレーター)

路床(原地盤)は主に土で出来ていて地盤の強度に大きく影響します。
路盤は路床の上に設けられ、表層および基層に均一な支持基盤を与えるとともに、上層から伝えられた荷重を分散して路床に伝える役割を果たす層のことです。
フィルター性(分離効果)により、路盤材と軟弱路床土との混入を防ぎ、舗装支持力を確保します。

<路床路盤の分離(セパレーター)用の不織布関連商品>

インターロッキングの不陸防止

インターロッキング舗装は、サンドクッションの敷きならしで砂目地工法によることが一般的です。
この工法は、置き敷き工法のため、施工が容易で工期の短縮が図られます。
透水性の高い舗装材を使用した時は、路盤層への砂の流入を防止透水シートを敷くと、サンドクッション層からの路盤層への砂の流入がなくなり、ガタつきを抑え安定した舗装面をつくります。

不織布シートがある場合

不織布シートがない場合

<インターロッキングの不陸防止用の不織布関連商品>

水平排水

含水比の高い土で構築すると、間隙水圧が上昇し法面のはらみ出しが生じることがあるので、透水性の良い材料で水平排水層を敷設し、間隙水圧を低下させて盛土の安定を高めます。
地下水位の高い箇所に盛土を構築する場合、特に雨水や浸透水の影響が大きいと想定される盛土では設置する必要があります。
不織布に中空チューブを挿入し通水効果を高めた製品などもあります。

<水平排水用の不織布関連商品>

トラフィカビリティの確保

トラフィカビリティとは、建設機械等が走行に耐えうるかを表す地盤の能力のことを言いいます。
仮設道であれば敷砂利や敷鉄板などで進入路をつくります。
建設機械の作業性を改善させるため、シートを敷設した地盤に盛土することで、表層支持力補強させ軟弱地盤への沈み込みを低減させます。

以前は、不織布をハト目や縫製で繋ぎ合わせ、トラフィカビリティを確保してましたが、最近では、薄くて引っ張り強さのある織布を用いるケースが主流となっています。

不織布シートがある場合

不織布シートがある場合

<トラフィカビリティの確保用の不織布関連商品>

層厚管理

盛土材料を変えて構築するサンドイッチ工法や、適切な層厚状況を外方より確認するためなどに用いられます。
また盛土同士が混入しないので、全体を均質かつ十分に締固めるなどの効果もあります。

<層厚管理用の不織布関連商品>

圧密促進、不等沈下対策

不等沈下は土質性状の異なった地盤上に、構造物や新規盛土を設置した場合に起きる沈下現象です。
盛土の締固めが不十分であったり、地盤の厚さが不均一であることなどに起因します。
不織布を使った対策は、主に大規模造成や盛土などで使用され、圧密促進を図って事前に軟弱地盤の沈下を促進させます。
また、シートを敷く事で、部分的にかかる荷重を平均化させる効果があります。

<圧密促進、不等沈下対策用の不織布関連商品>

暗渠フィルター

暗渠とは地下に埋設した水路のことで、穴の空いた管などを埋めて地下停留水を排水する仕組みのことです。
古くは竹なども使用されていましたが、水はけの良い土壌に改善するため使用されます。
暗渠パイプの吸水孔に土砂が詰まると効果が落ちるため、不織布を暗渠パイプや砕石の周囲に巻くことで、フィルターの役割を果たし、目合いより大きな土砂が侵入しなくなります。

<暗渠フィルター用の不織布関連商品>

まとめ

土木工事用不織布とは何かという基本的なことも含めて、代表的な使用例もいくつか紹介させていただきました。
想像よりも使い道が多いことに、驚かれたのではないでしょうか。

種類が豊富で使いやすく性能がいいことから、土木工事に不織布は幅広く使用されています。
ご紹介した用途以外にも、使用方法は沢山ありますが、また随時紹介していければと思います。

この記事が土木資材選びをはじめ、土木工事をする皆様のお役に立てば幸いです。

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